舌足らずの詩人は

福地勇からあなたへ歌や病気など

2021-01-01から1年間の記事一覧

「今はちょっとつらいのだ。」 と言うと 「気の持ちようだよ。」 と言う。これは善意だ。 僕をなぐさめてくれている。でも、それは分かっている。 むしろ、 気の持ちようだから、つらいのだ。 気が持てていればつらくないのだから。だから、 「気の持ちよう…

不老不死。 太古の昔からそれは人間の夢だ。でも僕は、 人生は苦しみの一本の綱で、 そこに喜びの結び目が ぽつりぽつりとあるくらいに今は思っているから、 そんな苦しみが永遠に続くのかと、 考えただけでぞっとする。八百比丘尼は不老不死の人魚の肉を食…

「自然」を、人間が「守る」のだと言う。そんなうぬぼれた話があるだろうか? 人間が、自然を守ってあげる立場にあるとでも思っているのだろうか?確かに、 「自然」を今の様にしたほとんどの原因は人間にある。 これ程地表の景色を変えた生物は、40億年い…

『私どもは時々、不具な子供のやうないぢらしい心で、部屋の暗い片隅にすすり泣きをする。さういふ時、ぴつたりと肩により添ひながら、ふるへる自分の心臓の上に、やさしい手をおいてくれる乙女がある。その看護婦の乙女が詩である。』 『詩は私にとつての神…

からたちの花と言う童謡を、 聞いたことがあるでしょう? からたちの花が咲いたよ 白い白い花が咲いたよっていう。これね、 ここまでしか知らないでしょう? 僕もそうでしたが、全文はこう からたちの花が咲いたよ、 白い白い花が咲いたよ。 からたちのとげは…

頭寒足熱と言う。 何かにつけ良いと言う。勉強も集中してはかどる。 夜もすんなりと眠れる。なるほど。でも僕は、足の裏火照り性なんだよなあ。 むしろ冷やしたい。足熱なんてしたら、 勉強も集中して出来ないし、 夜も眠れない。 一般的にっていうのは確か…

詩は芸術か? と問われれば、大抵の人はよく分からぬから 「そうだ」 と答えておく。 僕もそう答えておく。辞書で「芸術」と引くと、みな「文学」「詩」も載っているから、そうなのだろう。音楽は芸術か? 「無論そうだ」 と人は答えるのだが、 その頭に浮か…

最近、介護を学ぶ機会があって、 つくづく、年をとる事が怖いと思った。もちろん介護を学ぶのだから、老人の、介護されるべき悪い所ばかりを見るのだが、 それにしても、年をとる事に恐怖を覚え、絶望すら感じる。今の日本人の平均寿命が八十何歳で、健康寿…

僕のベランダには今、朝顔があって、それは元気に育っている。朝顔なのだから、ツルが伸びる。 そんな事はちゃんと知っているから、ちゃんと棒を立ててある。 しかし、その棒が若干短いのだ。 もっとも、さほど大きくない植木鉢だから、あんまり高い棒は立て…

夢があって、そこへ向かっていく姿というのは美しいものです。僕は嫉妬さえします。声優という仕事は、とても意味深いと思います。 声は、とても重要です。それを与える仕事です。それゆえに、こういう一面もあるのだよという事を、知っておいて欲しいのです…

道程僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る ああ、自然よ 父よ 僕を一人立ちにさせた広大な父よ 僕から目を離さないで守る事をせよ 常に父の氣魄を僕に充たせよ この遠い道程のため この遠い道程のため こんなものを中学生が理解出来るだろうか? 確かに印象…

宮沢賢治の話をしよう。 これはあなたに聞いて欲しい話だ。宮沢賢治。 多分日本の中で、一番有名な日本人だ。でも何で? 教科書でしょう。あとはテレビ。「雨ニモマケズ」の乱発。童話。 有名な幾つか。 ちゃんと読んだことはなくとも題名だけは。でも何で? …

僕よりはるかに重い病気の伯母がいて、その伯母がまた治療に入るという。 電話口で、あなたもがんばってね。心配してくれてありがとうね。と言われた。 ありがとうね。と何度も言われた。 そんなの、涙出ちゃうよ。 奥さんに見られるとかっこ悪いから、とて…

近くの木立ちの中で、聞いたことの無い鳥が鳴いていましてね、 そこそこ音量があり、 そのくせいい声だった。 注意深く聞いていたけど、なんの鳥か分からなかった。 しばらくして、いなくなりました。これが、 その鳴き声が、 思い出そうとしても、思い出せ…

『茂吉』の事を言ったから、短歌について。短歌で一番有名な人、石川啄木。 でしょうか、 「一握の砂」ね。 東海の小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる たはむれに母を背負ひて そのあまり軽(かろ)きに泣きて 三歩あゆまず はたらけど はたらけ…

『字余りの茂吉』の真骨頂の『茂吉の字余り』 湯いづる山の 月の光は隈なくて 枕べにおきししろがねの時計を照ら す(ゆいずるやまのつきのひかりはくまなくてまくらべにおきししろがねのとけいをてらす)病気を持っていた茂吉が湯治を兼ねて温泉旅館に泊ま…

『茂吉の字余り』 けだものは食もの恋ひて啼き居たり 何といふやさしさぞこれは(けだものはたべものこいてなきいた り なにというやさしさぞこれは) かっこいい。 でも実はこれ、 一文字字足らずなのだ。だから本当は 『茂吉の字足らず』 なんだけど、(な…

茂吉の事を言ったからには、やはり茂吉を語らねばなるまい。 この夜は鳥獣魚介もしづかなれ 未練もちてか行きかく行くわれも(このよるはちょうじゅうぎょかいもしずかなれみれんもちてかゆきかくゆくわれも)「か行きかく行く」とは「彷徨う」の事。かっこ…

のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にゐて足乳根の母は死にたまふなり(のどあかきつばくらめふたつはりにいてたらちねのはははしにたもうなり)斎藤茂吉の恐らく一番有名な歌だ。確か中学の教科書にもあった。祖父が、僕が中学の時に死んで、葬式の為に田舎へ行った。…

誕生日なのだよ、今日は。 もう、一人でいじけているのはやめにしよう。さあ、一年の目標を立てよう。51才の抱負を叫ぼう。首を上に持ち上げて、曇った空を見よう。 今日はよく寝よう。

高村光太郎。一生を棒にふって人生に関与せよと言った人。吹きつのる雨風の中、圧倒的な美の前にひれ伏していた人。あり余る落ち葉を浴びていた人。火星を見上げていた人。妻を狂わせた人。たくさんの詩人の中で、僕が一番好きな人。詩集を貸してくれたのは…

僕は今五十歳なのだけれど、つまり昭和四十五年生まれなのだけれど、それは1970年、戦争が終わって25年後。戦争の影すら感じる事なく、育った。 戦争は教科書の出来事だった。 でもこれは、何と言うか、今から25年前、僕は25歳。 こう書きながら、にわかには…

知らないとは思いますが、立原えりかという童話作家がいまして、その世界では有名な人。とてもメルヘンなので女の人が好きそうだから、 「僕は児童文学が好きです。」 「例えば誰とかあります?」 「立原えりかとか。」 「へえ・・・」 「とてもメルヘンで・…

そういう事だから、そちらにも色々とあったことでしょう。何しろ十五年ではきかないわけだから。しかし、もうとっくに音信は途絶えているし、もはや生きているのか死んでいるのかすら分からない。 だから、これは独り言である。 今までに出会った人のうち、…

あれから、実は色々あったのだよ。考えてもみたまえ。もう十五年ではきかないよ。そりゃあ五十歳にもなる。 病気をした、舌癌という、つまりガンだ。これはもうほとんど治ったけれど、癌というのはやはり大変だ。大人が泣くほどだ。これに就いては追々。多少…